都立・公社病院の独法化強行 医療水準の後退は許さない

7月からの独法化強行

 東京都の8都立病院と6公社病院すべてが「地方独立行政法人東京都立病院機構」への移行が強行されました。この独法化は、小池都知事が2019年12月議会において突然表明し、2022年3月議会で自民・公明・都民ファースト・東京維新の会の賛成で都立病院廃止条例が可決され、都立病院の廃止・独法化を決定しました。まさにコロナ禍で医療がひっ迫し、医療の充実が求められている最中に、「都民のいのちの砦」都立病院の独法化を強行したことは断じて許されません。独法化を巡っては、行政的医療の後退、人件費削減による医療人材の流失や患者負担の増大などから反対運動が広がり、反対署名は40万人を超えましたが、こうした都民の思いを無視して独法化が強行されました。

コロナ禍で都立病院の役割鮮明に

2020年1月に、中国武漢からチャーター機で帰国したコロナ患者を受け入れたのは、都立駒込病院と公社の荏原病院でした。その後、2回目の緊急事態宣言が出された2021年1月には、都立広尾病院、荏原病院、豊島病院がコロナ専門病院となり、都立・公社病院で最大時2210床を確保し、特に重症患者や妊婦・障がい者・外国人などの困難な事例の受け入れを積極的に担ってきました。また、全国の病院のコロナ病床確保数の1位から11位までが都立・公社病院が占めています。都の直営でかつ経験ある職員がいたからこそ、迅速で柔軟な対応により病床を一気に増やすことができたのです。民間病院では常に採算を考えなければならず、病床や専門スタッフの確保、陰圧室の確保などの設備投資も迅速には対応できません。すでに独法化された国立病院機構や大阪府立病院機構ではコロナ病床確保が都立・公社病院に比べ桁違いに不十分な対応しかできなかったことを見ても、独法化により新型コロナのような感染症対応=行政的医療の後退が懸念されます。

医療水準は後退させない

地方独立行政法人移行後は、独立採算と経営効率が求められ儲かる病院経営が優先されることになります。そのため、不採算医療=感染症医療、救急医療、周産期医療、精神医療、障害者医療などの縮小、患者負担増や職員の賃金労働条件の低下、病院の統廃合などが懸念されています。

独法化は強行されましたが、今後も小池都知事が議会で再三答弁した「独法化移行後も現在となんら変わらない」「行政的医療への予算は確保する」を確実に実施させていくことが必要です。そのためにも都からの財政支出削減許さない取り組みや、移行後の運営状況をしっかりと監視し、必要な意見をあげていくことが必要です。独法化後も医療水準を維持し、都民のいのちを守る砦としてさらなる充実を求めていく運動の強化が求められています。