「非核の火」を永遠に

 東日本大震災・福島第一原発事故から十年となる2021年3月11日、上野東照宮で30年間灯し続けてきた「広島・長崎の火」が「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ」を結ぶ「非核の火」として福島県楢葉町の古刹宝鏡寺に点灯された。

「『非核の火』を灯す会」の共同代表である伊東達也さん(全国革新懇代表世話人・いわき市民訴訟原告団長)が二度と原発事故を起こしてはならないと決意表明、同じく共同代表の早川篤雄さん(宝鏡寺住職・福島原発避難者訴訟原告団長)と安斎育郎氏(放射線防護学)が除幕をおこなった。

 入院中のためこの式典に出席できなかった私は11月、文芸誌『民主文学』に執筆するため、伊東さんを取材した後、共に早川さんを訪ねた。5年前、お二人には原発事故を題材にした長編小説『大地の歌ごえ』(赤旗連載)に登場していただいた経過もあり、私としては、「原爆の火」が宝鏡寺に移された経緯を知っておかなければならなかったのだ。「非核の火」と表題されたエッセイは2022年4月号に掲載された。

 昨年の12月、政府は原発の新規建設と運転期間延長という「原発回帰」に大転換した。その7日後、早川さんが誤嚥性肺炎のため83歳で亡くなられた。今年1月、東京高裁は、東電旧経営陣に対して一審を支持し無罪とした。原発事故は人災である。未曽有の被害をもたらした会社の最高責任者が無罪であろうはずはない。早川さんのご冥福をお祈りすると同時にその意思を継いでいかねばならない。

たなかもとじ